ショールーミングとは?
ショールーミングとは「実店舗では実物の商品を見るだけで、実際にはアマゾンなどのECで購入すること」です。理由は、店舗で購入するよりECの方が安いからです。お客さまの立場からすれば、合理的な買い方です。ネットでは「ショールーミング」は悪であるような記事が多数見受けられますが本当でしょうか?
ショールーミングを抑制しようとすると、お客さまから反感をかうだけで、せっかくのファンが離れていってしまいます。これは、店舗としても望む事ではありません。お互いにメリットがある発想でショールーミングを付き合う方法を考えなければならないのですが、答えは店舗での施策にあります。
ショールーミングを言葉の定義で考えると悪循環に陥る!
ショールーミングするお客さまといえば、欲しい商品が自分がイメージ通りなのかマッチ度合いを確認するために来店します。店舗かれすれば、お客さまに接点を持てる機会ですので、逃したくありません。企業からすれば、店舗でもECでも商品が売れることには変わらないので、良いことのはずですが、大きな問題が3つあります。
- 店舗の売上にならないということです。店舗にはノルマがあり、全国の店舗と厳しい競争の中、評価にならないことは悪とみなされます。
- 情報を得た店舗と購入するECが同じ企業とは限らないことです。店舗を経営している「A企業」で情報を聞き、「B企業」が経営するECで購入するということです。このことには、売上が低迷するだけでなく、不良在庫が増えるという影響もあります。
- メーカーとしては、新作を販売して欲しいと思うが、店舗の在庫がなくらなければ仕入をすることができませんし、売上がなければ仕入れる資金もなくなります。店舗は、不良在庫にならないように仕入が慎重になります。これでは、お互いの関係が悪くなり悪循環になります。
ショールーミングは、お客さまの行動であり、企業が制御出来るものではありません。
このままでは、店員はやる気がなくなってしまいますし、お客さまのスマホに敏感に反応してしまうのではないでしょうか。これでは、誰も嬉しいことはなく悪循環になってしまいます。ポジティブな発想にしなければなりません。
悪循環から好循環へ発想を変える
悪循環のままでは、みんなが不幸になります。好循環モデルに発想を変えなければなりません。
下記に考えられる施策がありますが、これは店舗だけでは成り立ちません。多店舗展開をしていれば本部の協力も必要となるものです。
- 企業ルールとして、店舗の売上だけで評価するのではなく、ECへの貢献度や店員のファン数なども評価対象として含める。これにより、健全な商品価値を提供するという本質に店員の気持ちがなります。
- ショールーミング店舗を開いても良いかもしれません。しっかりと商品価値を説明し、名刺にはECのURLを記載しておくのも1つの手です。実際の店舗との違いは、営業成績の考え方もそうですが、接客方法が店舗ではなく、ショールーミングを前提にした接客であるということです。店員がタブレットで最安値を教えるのも、お客さまにとって驚くことでしょう。ただ、これが出来るのはメーカー企業しか出来ない施策ではあります。店舗を経営する企業視点でいえば、店舗でもECでも売上となりますので、店舗がECをサポートしたことになります。
- ショールーミングに限ったことではありませんが、店舗の強みはお客さまと直接的にコミュニケーションをとることができる場所です。ショールーミングでありながらも、ファンを増やすおもてなしで価格差以上の価値を提供できるのではないでしょうか。
また、ショールーミングの目的が価格であるならば、価格差を埋めることが重要です。
- コスト構造の見直しにより価格差を縮めることができます。「仕入」「物流」「人件費」「家賃コスト」「卸値」など、EC に比べてコストがかかっている場合があります。この差を減らすことで、店舗での販売価格を同等にすることが可能です。価格の違いなら、店舗で店員さんの意見を聞き購入した方が、お客さまにとっても良いことです。実際のコスト構造比率は、企業によって違いますので実数字を見て検討しなければ正しい具体的な施策にはなりませんが、検討する価値はあるはずである。場合によっては、いままでは暗黙的に思い込んでいたことが、実は割高かもしれませんし、コスト削減の改善ポイントを発見できるかもしれません。
- 価格差を埋める付加サービスの提供も施策です。たとえば、VIPルームでおもてなしをする。チャームをプレゼントする。ポイントを付ける等々、店舗限定の付加サービスです。これにより、実際にキャッシュだけではなく価格差を埋める心理的なものでも効果はあると思います。
メーカーと小売・セレクトショップの施策
ショールーミングを目的としたお客さまには、メーカーと小売・セレクトショップでは戦略が違ってきます。
小売・セレクトショップは、自社系列で購入していただかなければ業績になりませんから、出来るだけ店舗で購入していただけるように、付加価値サービスで価格差を埋めることをしなければなりません。O2O(Online to Offline)でお客さまに来店していただき、楽しく・再度来店したいと思っていただける店舗で、付加価値を提供し購買につなげることが施策となります。
メーカーは、チャネルがどこであろうと商品が販売できればよいので、オムニチャネルと社内ルールの見直しが施策となります。
但し、メーカーとしてもセレクトショップの功績は大きく、セレクトショップが悪循環になっていくことを放置するわけにはいきません。セレクトショップと、ショールーミングに対する協業も重要な施策となります。たとえば、不良在庫の引き取り(中古業者より高価買取)・共同でのオムニチャネル戦略の成功報酬などが考えられます。自社だけでなく、お客さまを含めて幸せになる施策が求められていると思います。