セブン&アイのオムニチャネルの設計を解析する!

セブン&アイのオムニチャネルの設計を解析

セブン&アイのオムニチャネルの設計を解析します。
理解を深めるため、是非「セブン&アイのオムニチャネルを分析する!」を事前に読んでいただきたいと思います。
セブン&アイのオムニチャネル戦略は、ネットとリアルの融合の定義を商品・お金・情報がシームレスに繋げると位置づけています。このオムニチャネルを実現するためには「オムニチャネルとしてのEC」「注文から商品お渡しまでの時間」「商品の受け渡しサービスとしての物流」がポイントになります。この3つのポイントについて説明していきます。
補足になりますが、当然ながら膨大な購買トランザクションをデータマイニングすることで、趣味嗜好を理解する等々のポイントはあります。いわゆるビックデータです。ただ、セブン&アイのお客さまは、特定のセグメントというよりは、マスに近いです。つまり、購買傾向は取れるが、老若男女の全てに対応するということは特徴がないことになってしまうことや、既知の情報から精緻にはなるものの大きくかけ離れた結果にはならないと想定されることから、ポイントからは外しました。

オムニチャネルとしてのEC

セブン&アイホールディングスのECサイトに訪問したことがあるでしょうか?(セブンネットショッピング
セブン&アイホールディングスとしてのタブ、西武としてのタブ、赤ちゃん本舗のタブ、それ以外にも複数のタブが存在しています。また、URLを見るとサブドメインやフォルダで別れていて、統一感がありません。これは、事業の拡大に伴う、拡張や暫定的な統廃合を図った結果であると思われます。また、よく商品を見てみると、セブン&アイと西武で同じ商品を販売していることがわかります。ホールディング傘下の会社同士でカニバリゼーションをおこしていることです。これでは、お客さまは混乱してしまいます。
それ以外にもホールディング傘下には、タワーレコードやロフト等々もあり、ホールディングとしてのオムニチャネルを実現するには、ITの仕組み以前に傘下企業の役割を整理する必要があります。利用するお客さまが混乱もなく、楽しいお買い物ができる場の提供です。
デザイニストラボでは、セブン&アイホールディングのECは、傘下企業の専門性を強みとした役割としてモール型が適していると考えます。ホールディングとしての全体最適化と傘下企業としての個別最適化の融合です。そしてセブン銀行とnanacoポイントを使えるようにして、セブン&アイホールディングで完結できるようにすることである。楽天が楽天経済圏を創造したように、セブン&アイもより経済圏の発展にオムニチャネルは貢献する良いきっかけになると考えます。

注文から商品お渡しまでの時間

ホールディングスで購買機会を最大に活かすことであることから考えると、ホールディングス全ての莫大な購買トランザクションが発生します。
店舗で購入して持ち帰るスーパーのような形式であれば現状のままでも問題ありませんが、セブンイレブンで荷物を受け取れるとなると、ECに限らず店舗等々の全ての購買を処理しなければなりません。しかも、翌日配送では遅く、午前の注文には夕方の会社からの帰宅時には最寄りのセブンイレブンで受け取れるようにしなければなりません。そして、夕食のお弁当も一緒に購入してもらうのです。完全なリアル処理ではないにせよ、それなりの間隔でトランザクション処理をして、物流に情報を流さなければ後続処理を進めることが出来ません。言うのは簡単ですが、IT経験者であれば、実現が容易ではないことは想像がつくことと思います。
後続の物流はコストが発生することから、どれだけ効率化することが出来るかが勝負です。おそらく、セブンイレブンへの定期トラックに商品も一緒に運ぶことを考えていると思います。とすれば、定期トラックの時間にあわせて商品の準備をしなければならず、時間との勝負になります。これは、WEBサイトのようなトランザクション処理を要しながらも、リレーション処理を求めていることから、通常のシステム設計では性能がでないため、試行錯誤しながらもハイレベルの技術力が要求されます。

商品の受け渡しサービスとしての物流

まず、商品特性によって違いがあるが、たとえば生鮮食料品を会社からセブン&アイのネットスーパーで購入し、会社帰りに自宅近くのセブンイレブンでの受け取りを考えてみる。
データの処理は大きく下記となります。

  1. ネットスーパーの注文データ
  2. 受け取るセブンイレブンに一番近いセブン&アイのスーパーに注文データを伝える
  3. 注文データをもとに商品をピッキングし梱包する
  4. 定期便のトラックに乗せる
  5. 商品をセブンイレブンに届ける

この際、在庫管理はしない。レタスは箱単位では管理するかもしれないが、商品として出せないレタスも存在することから個数まで管理することは非現実的です。よって、在庫はあるものが前提として在庫引き上げてをせずに処理をすることになります。また、生鮮食料品を扱うのであれば、セブンイレブンに生鮮食料品を保存しておく設備投資・取りに来なかったときの扱い等々の課題が残ります。
余談になるが、オムニチャネルに在庫管理が重要であると多くの記載があるが、商品によっては在庫は有るものと前提にならざるを得ない場合があることがわかります。
次に書籍などの賞味期限を気にしなくても良い書品を考えてみる。書籍は最寄りのセブン&アイにあるとは限りません。特にビジネス本はオフィス街や大型書店にいかなければ、限られた新書しか期待はできません。経営の勉強をしたことがある人であれば理解できると思いますが、実際に手に取り確認して購入するためには大型書店にいかなければなりません。つまり、書籍の在庫は限られた倉庫にあり、ここから配送されることになります。この場合、当然ながら在庫引き当ては必要になってきます。
ただし、書籍の仕組みを考えるとアマゾンと一緒である。アマゾンは既にローソンやファミリーマートで受け取ることが出来ます。またアマゾンは巨大なアメリカを制しており、物流ノウハウは十分にありますので、取扱い商品によってはアマゾンとの真っ向勝負になります。勝負をするなら、物流コストをホールディングスとして効率化し、お客さまに還元することができればと思ったのですが、これまたアマゾンも物流には力を入れていますので、消耗戦になるかもしれません。
このことを考えると、通常の発想でのシステム化ではアマゾンとの消耗戦です。在庫確認が必要な商品については、タワーレコードを含めてホールディングス傘下企業全てで在庫管理をして、最適な物流ロジックを作り出さなければなりません。ジュンク堂は、倉庫→大型店舗→出版社→全国の店舗という順番で在庫確認をします。セブン&アイも同様に在庫を物流の視点から探し当てるロジックが重要になってくると考えられます。

実現に向けてのハードル

セブン&アイホールディングのオムニチャネルの仕組みは、現状の拡張では制約条件となる実現は非現実的と考えられます。スクラップ&ビルドとなると、今度は膨大な時間と投資が必要になることから、非常に厳しいプロジェクトになることは必至です。
また、徐々に実験的に展開していくとのことですが、上記のような処理は基盤となるアーキテクチャ思想が重要になってくる。つまり、いままでの大規模システムの感覚で構築し、実験的に拡張をしていく方式では、いづれ限界に達してゼロからの再構築が発生する危険がある。まずは、しっかりした技術検証も含めてアーキテクチャを設計することが、壮大なオムニチャネル戦略を成功させる鍵になると考えます。
ビジネスには時間軸も必要なことから、少しも無駄も許容しつつ構築することもかんがえなければならないかもしれません。そうなると、もかしたら1000億円とも言われる投資もシステム以外も含める足りなくなる可能性もあるかもしれません。