オムニチャネルの誤解
オムニチャネルが小売の主流となり、店舗・ECともに厳しい状況になっていきます。大手小売は、資本力を活かした大規模なIT投資をして、更なる優位性を確立しようとしています。セブン&アイのオムニチャネルは、グループ各社を融合させようとしています。既に、セブン&アイのECサイトで購入した本をセブンイレブンのコンビニで受け取れるサービスは開始しています。これからも随時サービスを充実させていく予定で、グループ各社は、それぞれの強みで事業を展開していきながらも、グループ全体は1つの企業体のように繋がり最適化を図っていくものと考えられます。
小売業は、益々厳しい状況へとなっていきます。とはいえ、大手のオムニチャネルを黙って見ているわけにもいかず、中小企業も積極的にオムニチャネルを取り入れようとしている企業の少なくないと思います。しかし、期待した効果が得られずにいる企業も少なくありません。何故なら、オムニチャネルの理解が、店舗とECの両方を営むこと、顧客情報を統合すること、在庫管理をすることのように考えられているためです。
たとえば、オムニチャネルを店舗とECの顧客・在庫情報を連携させることと考えてみると、お客さまからすれば、店舗もECも同じ企業として見ていますので、やっと不便なことが解消されると思っています。不便なことを解消することは商機に繋がりますが、新しい価値を提供していることではないので、短期的なそれなりの成果しか期待できません。
オムニチャネルの説明の殆どはIT投資が目的
このような誤解がうまれる背景には、オムニチャネルを具現化するには、IT投資が必要不可欠であることから、SI企業・ECサービス提供企業が積極的に活動をしており、説明の殆どがIT投資を目的として書かれているからです。だから、顧客情報、ポイント情報、在庫情報の連携が必要である、プロジェクトを推進するには関係部署の協力は必要であるということを説明します。確かに、オムニチャネルをイメージするにはわかりやすく、IT投資のポイントも理解することができますので、とても有益です。
でも、オムニチャネルの本質は、仕組み作りではなく、ここからの戦略の発展です。店舗とECの融合は、オムニチャネルの必須となる施策の1つでしかないのです。言い方を変えると、オムニチャネルというよりは、オムニチャネルの要件定義なのです。
オムニチャネルという言葉からすれば、全ての販売チャネルを統合するということですが、社内都合で出来なかった事が出来るようになり、業務プロセスや、業務内容にも変化があります。ようは、オムニチャネルを導入する前と後では、KPIの見直しがあってしかるべきで、社内のバリューチェーンへの影響が大きいはずなのです。この影響を事業の成長に活かすことが、オムニチャネルの真価であると考えます。
オムニチャネルの本当の真価とは?
オムニチャネルは、単なるIT投資ではなく、事業に大きな影響を与えます。この影響を事業を強固にする方向性へと示すことで真価を発揮すると考えます。
たとえば、在庫管理の視点では、オムニチャネルが導入されることで在庫管理が店舗とECで一緒となり、それぞれで抱えていた余計なリスク在庫が不要となります。在庫は売れることでキャッシュとなるもので、売れ残った在庫は資産から、処分すべき資産価値ゼロに変身するものですので、最低限にしなければなりません。在庫管理以外にも、様々なデータが統合されることにより、いままで見えなかった事が分析からわかるようになります。これにより、精度の高いパーソナライズ化が実現できるようになります。
このような戦略的思考により、収益性を高め、得られた利益を次の投資へと繋げていくことで、強固な企業へとなっていきます。
まとめ
オムニチャネルの導入を機に、事業を発展させる戦略の策定が重要です。IT投資だけでも、それなりの成果は得られるかもしれませんが、それだけで留めてしまっては、勿体無い事です。オムニチャネルを最大限に活かすための、オムニチャネル戦略としてのグランドデザインを策定して実行していくことが、オムニチャネルの真価を発揮し、恩恵を最大に受けることができるでしょう。