資生堂のオムニチャネルを分析する!

資生堂のオムニチャネルを分析する!

資生堂は、誰もが知る日本国内の化粧品メーカーです。資生堂もオムニチャネルを展開しました。資生堂は、自社メーカーであることや、日用品の小売とは違うマーケティング戦略であることもあり、セブン&アイのオムニチャネル戦略とは違った視点があります。
資生堂のオムニチャネルは、下記を掲げています。

  • 美と健康に関する企業と専門家によるコラボレーションサイト「Beauty & Co.(ビューティー・アンド・コー)」
  • 総合美容サービス「watashi+(ワタシプラス)」
  • 上記、2つのサイトと実店舗網で構成

セブン&アイのように、ネットとリアルの融合であることは理解できると思います。資生堂のネットとリアルの融合は「O2O(Oneline to Offline)」に近い考え方と解釈しました。詳細は記事を読んでいただければと思いますが、店舗(美容部員)への誘導を目的にしているように感じました。理由は、商品価値を知ってもらうために、美容部員が欠かせない存在であり強みと位置付けているからです。このことは、資生堂は、資生堂学園資生堂美容技術専門学校という学校法人もあり、美容部員を育てることもしていることからもわかると思います。
この記事では、資生堂のオムニチャネルを分析し、オムニチャネル戦略のオムニという言葉だけではない、オムニチャネルを更に深めていきたいと思います。

個々の戦略を考える

化粧品は、流行や季節などにより使い分けます。言い方を変えると、口紅が無くなったら次のを買うのではなく、無くなる前に次の流行りにあわせて買い足しをする感じです。いままでの口紅は奥深くしまわれるか、捨てられてしまいます。つまり、常に新商品の価値を提案し続けることが、化粧品メーカーの基本戦略となります。となれば、美容部員に活躍していただくことが、資生堂にとって重要な戦略となるわけです。
しかしながら、インターネットの普及により、お客さまは化粧品の情報を得ることが可能になり、口コミランキングを気にするようになります。このことは、美容部員の価値を別のネットで得ることが出来るようになります。また、美容部員の提案はすばらしいのですが、買わなければならない。他の商品も提案されるので、一緒に買わないといけない。という悪い心理が働き、店舗へは気軽というよりは、最終手段のように位置付けてきているのだと思います。
この状況から脱するために「Beauty & Co.」を開設したものと考えられます。まずは、資生堂だけでなくコラボレーション企業を集めることで、美に対する業界全体の底上げと、サイトを賑わせるための有効な戦術です。また、美の価値ある情報からモチベーションが上がり、このタイミングでコラボレーション企業の商品・サービスがEC購入できるように誘導しています。モチベーションが高いので、購入確立は高いはずです。
他方で「watashi+(ワタシプラス)」は、資生堂の価値情報を提供する場になっています。「WATASHI」には、One to Oneの意味が込められていると考えられます。あなたを最高に美しくするのは資生堂の化粧品ですと、様々な手法で伝えていきます。しかしながら、基礎化粧品はあるかもしれませんが、口紅などは実際に試して購入に至るものです。そのため、サンプル提供や電話によるカウンセリングも実施しています。さりげなく、店舗案内も紹介します。このような施策から、最終的には店舗へ誘導するものと考えられます。ただ、化粧品を扱っているお店であれば試すことが出来、美容部員がいない場所でもセルフで確認することが出来ます。百貨店などにいる美容部員とある意味カニバリゼーションをおこしているともいえます。しかしながら、全国にいるお客さまに化粧品をお届けするには、全国に美容部員を配置することは非現実的であり、仕方のない戦略でもあります。

資生堂のオムニチャネル戦略

それぞれの役割から考えると、「Beauty & Co.」→「watashi+」→「店舗」という流れをイメージされているものと想像します。セブン&アイの全社の強みを活用したオムニチャネル戦略というよりは、個別最適化の戦略がまず存在していて、その1つとして店舗へ誘導する施策があるといった感じです。
また、店舗への一方通行は理解できますが、店舗からネットへの導線が不明です。このことにより、導線の途中で離脱するお客さまがいるということであり、不便になる部分でもあります。たとえば、美容部員はビューティアドバイザーでありながらも、実態はノルマに追われる販売員です。美容部員を文字通りのビューティアドバイザーであるなら、来店者数は格段に増えると思いますし、資生堂を好きになってくれると思います。「Beauty & Co.」のコンセプトを店舗にも取り入れることで、お客さま心理にも変化が起こり、個々が活かされ全体最適化になるのではと想像します。

まとめ

「店舗」「Beauty & Co.」「watashi+(ワタシプラス)」のそれぞれの戦略は素晴らしいです。ただ、個々の戦略は最適化でも、全体最適化の最適化がわかりづらいことが、次の課題になると思っています。つまり、意図した導線にお客さまが遷移してくれるかどうか未知数です。全体最適化は、資生堂グループの好循環モデルに役立つ考えからです。今後の全体差最適化が、成功の鍵になると考えます。
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