中小企業が経営するセレクトショップのためのオムニチャネル × O2O × ショールーミング!

オムニチャネル

オムニチャネル × O2O × ショールーミングは大企業の戦略なのか?

「オムニチャネル」「O2O」「ショールーミング」とそれぞれについて解析しましたが、「大企業」もしくは「ブランド(メーカー)」には有益な施策であるが、個人や中小のセレクトショップにとっては、オムニチャネルは脅威のように感じられます。

このまま、大企業の小売だけが勝つという構図が日本経済に良いとなりません。個人・中小企業が日本経済を支えているという事実から、個人・中小企業のためのオムニチャネル × O2O × ショールーミングの考え方があるはずで、徹底解析することとします。
日本経済を支えている、みなさんのお役立てることができたら幸いです。

オムニチャネル × O2O × ショールーミングの取り組むべき課題

改めて言葉の定義をします。

オムニチャネル
店舗やEC、全ての販売チャネルや流通チャネルを統合することです。その結果、どの販売チャネルからでも同じように商品を購入できることができます。
O2O
インターネット媒体(Online)を介して、実店舗(Offline)へ誘導することです。ようは、Online(= IT)を活用して店舗(Offline)での購買を促す仕組みです。
ショールーミング
実店舗では実物の商品を見るだけで、実際にはECで購入することです。店舗で購入するよりも、ECの方が安い場合があることが理由です。

下図は、仕入~購買プロセスを図にしたものです。数字で示した「1~3」に検討すべき課題があります。
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  1. 不良在庫の問題:店舗では当然ながら商品を仕入れなければなりません。しかしながら、ショールーミングにより購買に至らなかった場合は不良在庫扱いとなり、バーゲンで安売りをするか、中古買取に卸すことになります。この行為は、在庫スペースの問題はクリアしますが、利益を削る行為であり、中古買取に卸すときは仕入値以下となり赤字になってしまいます。このことは、資金力低下・ショールーミングを警戒した仕入となってしまい、次の仕入れに悪影響を及ぼします。
  2. ショールーミングの問題:O2O(Online to Offline)による施策は効果的ですが、ショールーミングの流れを食い止める必要があります。これは、ITではなく店員の力が必要不可欠です。
  3. ECの問題:ECに流れたお客さまが他社のECで購入しないようにしなければなりません。ECを持っていない企業もあると思いますし、EC専門でも単なるセレクトショップは大手や仕入ルートに強みがあるECにお客さまは奪われてしまいます。自社でECを運営し、自社のECに誘導する仕組みが必要です。これには、ITと人の力が必要不可欠です。

ブランド(メーカー)の懸念

ここでメーカーについても考えてみます。ネットにあるオムニチャネルの記事は、小売のマーケティング視点で検討されていますが、ビジネスはバリューチェーンで成り立っていることから、小売の仕入先であるメーカーについても考慮することにしました。
メーカー視点で考えると、ブランド(メーカー)直営店では、オムニチャネルは最大限に活用すべき戦略で、いままの延長となります。また、セレクトショップへ卸すということにおいては、単純に考えるとオムニチャネルにより小売の販売量が増える可能性が見込まれることから、商品を提供する側も当然ながら生産量が見込まれて儲かると考えられます。
しかし、メーカーの商品提供先である企業は複数です。場合によっては卸業者が入ることで無数に広がります。大手小売は大量に販売してもらえる重要な取引先ではあるものの、小規模の店舗数は大手の何倍も存在していることから、大手のオムニチャネルにより小規模の店舗が影響をうけることは、結果的に販売量が低下するリスクへ発展しかねません。つまり、メーカーからすれば販売量を最大にすることが戦略となりますから、大手小売だけに依存することは販売チャネルを減らすことになり、結果的に販売量を減らすという可能性もあります。また、大手小売が強くなっていけば、取引交渉力のパワーバランスも崩れてしまいかねません。よって、ブランド(メーカー)にとっても、大手のオムニチャネルを手放しには喜べません。ブランドもメーカーの立場として、オムニチャネルの対応に取り組まなければなりません。

ショッピングモールの懸念

流行りのシッピングモールもオムニチャネルの影響をうけます。ご存知の通り、ショッピングモールには多くのセレクトショップが立ち並び、お客さまに価値を提供しています。オムニチャネルにより、小規模のセレクトショップに影響を与えるとすると家賃収入に影響があります。それでなくても、リアル店舗だけでなくECを強化するという施策ですから、ショッピングモールによってはマイナス要素しかありません。また、イオン・7&iにとっても、ショッピングモールの事業をしており、自分で自分の首を絞めることになってしまいます。このことから、全商品に対してオムニチャネルを強化するというよりは、ECで販売はするが力を入れるべきは、生鮮食料品などに限定することが得策であると考えられます。つまり、カニバリゼーション(共食い)をおこさないことが最善の施策となります。

デザイニストラボが考える、中小企業が経営するセレクトショップのためのオムニチャネル × O2O × ショールーミングとは?

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ブランドを提供するメーカー・ショッピングモールを分析したところ、オムニチャネルは使い方を間違えるとメーカーも大手小売も悪影響になる可能性があることがわかりました。大手は戦略の変更は非常に労力・時間・コストを要します。よって、大手の戦略を理解したうえで、中小企業が経営するセレクトショップのためのオムニチャネル × O2O × ショールーミングと向き合うことが大切です。
中小企業が経営するセレクトショップのためのオムニチャネル × O2O × ショールーミングで考える点としては、下記となります。

  1. 自社ECを持つ:もし自社ECを持っていないようであれば、自社ECを持つことを推奨します。出来たら、自社専用ECがあると好ましいですが、ヤフーショッピングでも良いと思います。理由は、来店していただいたお客さまには、名刺をお渡しすると思いますが、ショールーミングの際に名刺に記載されている自社ECにアクセスしていただけるかもしれません。もしかしたら、購入していただけるかもしれませんし、マインドシェアの向上に貢献します。もし今回がダメだったとしても、次回のチャンスになるということです。お客さまの購入先の1つとして認知していただける販促としての役割もあります。
    また、ランチャスター戦略に従えば、小規模の企業は、相手(大手)の弱みに自社の強みで戦うということになりますが、オムニチャネルのIT化という意味では、ある程度の同質化は最小限の投資でも可能です。つまり、大手しかない強みを少しでも同質化することができるということです。これにより、大手との差を縮めます。
  2. 在庫の一元管理:自社ECを持つことに伴い、在庫の一元管理は必要です。もし多店舗展開しているようでしたら、店舗間の在庫調整も可能となり機会損失を減らします。
  3. O2O(Online to Offline)の活用:これは、店舗経営をしているなら取り組まない手はありません。逆に取り組まないことによる、マーケティングの損失は大きなものとなるでしょう。
  4. 店舗造り:ショールーミング目的で来店されたお客さまも、もしかしたら店舗でお買い上げいただけるかもしれません。せっかくのチャンスを逃さない店舗造りが必要です。店舗造りといっても内装ではなく、店員の裁量と評価制度です。もし裁量を渡すと勝手に値下げをして利益が減ると思われるかもしれませんが、実験店舗で試すことも検討してみてください。もしかすると、店員は優秀で賢いですから、利益が下がらないどころか、売上が上がるかもしれません。リッツカールトン・星野リゾートは業種は違えど、お客さまへのサービスという点では勉強になります。また、ECに負けない付加価値サービスを提供することで、お客さまと店舗の両方が幸せになれます。

中小企業が経営するセレクトショップのためのオムニチャネル × O2O × ショールーミングに適応するには、「ITの力を借りて大手の差を同質化すること」「小規模の企業の強みは機動性であることを最大限の武器にする」ことだと思います。

セレクトショップの差別化要因はバイヤー

上記の戦略に加えて、やはりセレクトショップの差別化要因はバイヤーであることが考えさせられます。出来れば自社PB(プライベートブランド)があると良いのですが、ハードルが高いこと理解します。現在のお客さまの嗜好はインターネットの普及により変化してきていると思います。いままでは、まわりの目を気にして、同じであることが好まれてきましたが、嗜好が欧米化してきたのかファッションも個性が出てきたように感じています。言い換えると、流動化は激しいかもしれませんが、バイヤーもペルソナ(わかる!MBAが教えるペルソナ戦略)から外れないようにしながらも、少しは個性ある商品を買い付けてもよいのかもしれません。
大手小売視点でのマーケティング4Pで分析すれば、オムニチャネルは商品の影響をうけませんが、小規模企業視点のマーケティング4Pでは、価格勝負を余儀なくされることから影響をうけることになります。大手のオムニチャネル戦略に付き合う必要はなく、巻き込まれたら負けることは必至です。そうならないためにも、差別化となる独自性を確立することも検討していただきたいと思います。

理想は、ブランド(メーカー)とセレクトショップの協業モデル

上記のことをまとめると、小売の市場構造から考えるとステークホルダーそれぞれにメリット・デメリットがあることがわかりました。全てが自社だけで成り立つわけではありませんので、市場の最適化が自社利益の最適化になると考えることができます。つまり、ステークホルダーそれぞれの役割(価値)を尊重し、助け合うことで、市場が発展していくものと考えます。
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ブランド(メーカー)とセレクトショップの協業モデルのポイントは、下記3点です。

  1. メーカーはセレクトショップにも在庫情報を共有する。お客さまに商品在庫の情報を提供することが可能となり、メーカー・セレクトショップの両方において機会損失を削減することができます。
  2. セレクトショップでショールーミングし、メーカーのECで購入した場合は営業貢献として、バックマージンを提供する。
  3. セレクトショップのECで購入しようとした場合、セレクトショップの在庫では限界があるため、メーカー在庫も引き当てができるようにする。また、引き当てされた商品は売上仕入としてセレクトショップに卸す。

協業モデルは、メーカーの英断がなければ実現することはできません。しかしながら、英断されたメーカーには、お客さま・セレクトショップを含めたステークホルダー全員の幸せが待っていると思います。
最後に!
小規模企業にもすごい戦略があったとしても、大手小売企業の戦略にはまったら負けてしまいます。これは、戦いの主導権を握られてしまっているからです。つまり、ステークホルダーがコントロールされているということです。大手にコントロールされないように、中小企業の最大の武器である機動性を発揮して、相手の戦略から自分たちの戦略を見直し、ランチャスター戦略に従い行動するということを経営者が認識し、従業員とベクトルをあわせて一致団結していけば、大手に負けることはないでしょう。