IT投資の前に理解しておくこと
まず最初に戦略には実現性のある戦術的要素を包括する必要があると考えています。しかし、ネットでは戦略と戦術の違いを説明している記事が多数存在しています。どちらが正解というものはありませんが、MBA の授業や実務において戦略だけで物が終わることはありませんでした。何故なら、戦略は従業員にわかるように伝え、会社のベクトル合わせる指針だからです。だから、戦略には従業員がイメージできる戦術的要素を包括する必要があると考えています。では、実際にIT戦略の立て方について考えていきます。
IT戦略を策定する上で、もし IT を単なる道具と考えているようであれば、経営における IT の役割 を先にご一読いただけると幸いです。何故なら、IT は道具ではなく優秀な社員であると考えるか、道具として考えるかで、分析結果が変わってしまうからです。IT を単なる道具と考えると業務が主になり、IT が従となることから、IT 戦略は業務都合の補完でしか発想がなくなるからです。もちろん、全てにおいて。IT が優秀な社員ではなく道具としての役割も当然ながらあります。業務の補完として必要としている IT は、この分類になるでしょう。ただ、IT 戦略は、IT 投資選択が目的ではなく戦略です。会社として何が必要なのか、分析することが必要です。特に現在のネット社会において、道具だけと考えていると社内で使い業務だけであり、経営戦略としてネットとの融合を図ることは出来ないでしょう。このためにも、IT の役割をケースバイケースで考えることと、IT 戦略においては IT を優秀な社員としての要素も含まなければなりません。
市場・競合分析
経営戦略と一緒で、市場・競合分析をおこないます。調査要素としては、「競合他社のIT投資状況」と「自社のIT投資状況」です。情報収集の際に意識すべきは、バリューチェーンの流れに沿ったビジネス視点です。たとえば、店舗展開をしている小売業であれば、仕入~店舗~お客さまといった、流れがあり、お客さまであれば、新規獲得と既存顧客となります。これは、新規顧客獲得の投資と既存顧客への投資は違うからです。出来る限り自社ビジネスの網羅性があるようにすることが大切と考えます。
情報が集まったら、ブルーオーシャン戦略の戦略キャンバスを活用して図に示します。この図から下記がわかります。
- 業界の投資されている領域・されていない領域
- 競合他社が強みとして考えている業務・弱みの業務
- 自社が強みとして考えている業務・弱みの業務
この戦略キャンバスをもとに、会社方針との整合性をとっていきます。
会社方針との整合性
基本的には経営戦略との整合性となりますが、IT 投資には時間とコストがかかります。コストはROIを基準に考えることになるのですが、ここでは時間軸に注意をします。マーケティング戦略で新規顧客開拓を掲げたとしても時間を要します。IT も一緒でネットで集客としたところで、直ぐに集まるわけではありません。構築に時間を要しますし、ネット公開してからも、地道に集客活動を継続していかなければなりません。このことから、目先の経営課題だけではなく、将来のことも見据えて先行投資をすることも考えなければなりません。マーケティングに関する分野は特にです。よく緊急度 × 重要度という言葉を耳にしますが、これに時間的要素を加えた3次元がベストであると考えています。
また、IT経営戦略(一覧)には多くの補完する記事が多数掲載されています。是非、一度ご一読ください。
構築体制と手法
基本的にはSIerに委託することになるのですが、規模や社内事情によっては委託方法を変えなければなりません。たとえば、情報システム部の強さと利用部門の協力体制です。情報システム部の経験スキルが弱いとSIerと正しく付き合るかリスクがあります。経験値を積むまでコンサルタントに教育を含めて支援するよう依頼(無料相談はこちら)する必要があります。また利用部門にIT投資を情報システム部と一緒に構築することをミッションとしている人財がいないようでしたら、情報システム部が一人頑張っても期待効果は厳しいので、こちらもコンサルタントに潤滑油になってもらう必要があります。ここでのポイントは、IT投資は情報システム部の問題ではなく、会社の問題であり、会社として取り組まなければ成功しないということです。
また、手法も大切です。会社が会社の課題と認識したうえで、将来含めたITを強みとして活用するとなれば、スピードも重要な役割となるため、出来るだけ内製か小回りの利くSIerを選択する必要があります。自社のように親身になるSIerです。(参考)【経営課題】IT投資の方法を見直したい。IT投資の暗黙的にIT経営をすると決めても請負契約していますが、実際に強みとするのであれば、マーケティング販促費のように、IT投資枠として予算化してスピードあるIT経営をしなければ効果を最大化することは難しいでしょう。
そうではなく、単発でもよいと判断となれば、SIerに請負契約で委託することをお薦めします。この方が会社リスクは減るからです。SIerに丸投げできますので助かります。ただ、ROI(投資対効果)は予想を上回ることは稀であると考えた方が良いです。SIerも自社利益優先で、出来ることはやるけど範囲以外は知らない・やらないという悪しき業界習慣があるからです。請負には、SIerの選定や、正しく付き合えるスキルと経験が必要です。間違えると大変なことになりますので、ご注意ください。
技術
技術は日々進歩しています。また高価な有償ソフトウェアやミドルウェアがありますが、実際に使いこなしている企業は稀でしょう。大多数が半分以下の能力しか使っていません。これでは割高の投資をしていることと同じです。ようは技術を使いこなせば購入しなくても良いものあるのです。特にサーバやデータベースはもっともっと優秀なのです。もしくは、レガシーの技術もあります。レガシーは歴史があるので安定していますが、限界があるので差別化するようなIT経営をするのであれば、新しい技術も積極的に取り入れる必要があります。
ではどうしたらよいかといえば、IT業界でも技術に強い会社、弱い会社があります。技術も特定分野です。理想はそれぞれの強みのあるSIerと付き合うことです。しかしながら、これを情報システム部だけでマネジメントするのは非現実的ですので、ゼネコンをしてくれるコンサルタントと契約することが好ましいかもしれません。専門家がマネジメントからSIer選定までやってくれます。
ロードマップ
次はロードマップです。これは絶対的に守るロードマップではありません。あくまでも参考程度としてください。何故なら、お客さまの思考、業界の流れ、社内業務の事情等々の不確実な要素があり、経営戦略同様に柔軟に対応できることが重要だからです。とはいえ、何もないと戦略にもなりませんし、IT経営の目指すものがわからなくなってしまうからです。ですので、成果物としてロードマップは必要です。これを定期的に見直していくことが、現実味のあるIT戦略となるのです。
IT投資が具体的になったら
IT投資が具体的になったら、RFP(IT導入の具体的な提案依頼文書)の策定となるのですが、まずは ペルソナ戦略をやってみてください。これは、ネットに限らず、社内の業務系にも有効です。何が問題で、何が必要なのか、どのような視点で設計していていけばよいか、理解することができます。また、今後のPDCA を考える指針になるものです。