キャッシュフローベースのIT投資思考とは?

IT経営

キャッシュフローベースのIT投資思考とは?

キャッシュフローベースのIT投資とは、IT投資で得られた利益を次のIT投資の原資に役立てる思考です。経営は、資本を基にビジネスをして儲けを次の投資へ活用して、成長していきます。IT投資も一緒で、経営に必要不可欠な存在になっている現代では、IT投資の良し悪しが経営へ影響を与えていることは明らかな事実ですので、IT投資で儲けた利益を次のIT投資に活用することが大切です。
中小企業では大企業のように豊富なIT投資予算があるわけではないので、IT投資に慎重です。だからこそ、IT投資リスクを減らしつつ、限られた予算内のベストを繰り返すIT投資思考が重要となってきます。キャッシュフローベースのIT投資は、この問題を解決するIT投資思考です。

キャッシュフローベースのIT投資思考とは?

キャッシュフローベースのIT投資思考とは?

IT投資の見積り構造

IT投資の見積り構造を理解します。IT投資は高額であるというイメージがありますが、理由はIT投資の見積り構造にあります。
IT構築の見積りは、構築に必要と考える工数にリスクを付加した工数を上乗せします。リスクとは、お客さまの要望の変化、何かしら見えない機能が隠れているだろうという工数です。残念ながら、リスク工数は表面化しません。なぜなら、根拠ある数字ではないからです。ようは、発注者には説明がつかない工数です。しかも、リスクが発生しなければ、利益となります。
発注する側からすれば、無駄な工数です。このことは、情報システム部門の役割(第二回)にもありますが、専門的な知見がなければSI企業と交渉することは難しいと思われます。ですので、弊社のような発注者側の立場で投資を考えられる専門家が参謀として必要になっているのです。
もう1つは、1人当たりの単価です。ITは開発する労働時間の積み上げ算です。必要工数+リスク工数から、1人当たりの単価を掛け算します。もし、必要工数+リスク工数が100人月であれば、単価100万円を掛けて、100,000万円となります。企業によっては、これに利益を上乗せします。もしくは、単価調整をする場合もあります。これは、企業によって違っています。
1人月の単価は、人件費+事業費(間接部門の経費、社会保険料など)+利益で構成されています。つまり、IT企業の利益は1人当たりの工数の積み重ねです。もし、単価100万円として、給与50万(年収600万)+事業費(25万)と仮定すると、利益は25万円です。100人月の見積りであるとすれば、最低で25万×100人月=2500万円の利益見込みとなります。利益率は25%です。(あくまでも、構造を理解するための仮の数字です。)また、単価は担当する作業、企業によって違います。プロジェクトマネージャー、上流工程を担当するエンジニアは単価が高く、テストを担当するエンジニアは単価が低くなっています。通常、一律料金ということはありません。また、大企業の単価は高くなります。間接費が高い理由もありますが、企業ブランド価格もあり、大企業は信頼できる安心できるという価格です。しかしながら、IT業界は下請け構造ですから、実際に担当するのは、下請け企業です。実は、技術力があるのは下請け企業だったりするのです。ただし、高い技術力で言われたことは出来ますが、プロジェクトマネジメント、上流工程に弱いです。
このことから、中小企業の場合は、有識者となる参謀を発注者側に付けて、大企業のプロジェクトマネジメント・上流工程を補完させ、単価の安い下請け企業との契約をすることが、投資を抑えつつもプロジェクトを成功させることが出来ます。
では、何故このような構造になっているかIT業界目線で考えると、残業代(生産性)+見積りミス等により、利益を食い潰すためです。
IT業界もビジネスですから利益を追求することは必要です。ですので、この利益を食い潰す原因である、プロジェクトマネジメントが重要となり、素晴らしいプロジェクトマネージャーは利益を最大化する能力を持っています。IT業界には、価値ある人財です。

投資対効果の考え方

発注する側としては、投資対効果から投資額の妥当性を判断します。もし、100,000万円の投資とした場合、最低でも100,000万円以上の期待効果がなければなりません。また、構築して直ぐに投資対効果が得られるわけではなく、IT完成後の利用に応じて徐々に加算されていくものです。これが、何か月後に100,000万円を超えることが出来るかが、投資に対する損益分岐点です。
たとえば、毎月の効果が100万円とすれば、100,000万円÷100万円=100ヶ月(8.3年)となります。8年以上も掛かるのであれば、投資すべきではありません。ITにも時代や経営状況に応じて、ライフサイクルがあるからです。アドバイスするとすれば、最大でも3年(36ヶ月)以内に投資対効果がプラスにならなければ、別の方法を選択した方がよいでしょう。3年の根拠は、原価償却の5年から考えています。5年なら、3年後の2年分がプラスの効果となるからです。少なくとも2年間ぐらいの期間を確保する理由は、毎月100万円の効果に対するリスクと、出来れば確保したい効果量だからです。このプラスの期間が長ければ長いほど効果が得られますので、出来る限りプラスの投資対効果を得られる企画を考えることが大切です。
また、投資対効果はシンプルに考えます。経費削減なら、どれだけ削減効果が見込めるかです。単純に考えれば、毎月500時間の時間削減が見込めるなら、500時間÷160時間(1人当たりの1ヶ月の労働時間)=3.125となり、3人分の人件費が削減できます。
投資対効果は、この数字を軸に考えるべきですが、実はビジネス思考による付加効果があります。それは、3人分の人件費は削減するのではなく、他の生産性に利用するのです。
IT投資により効率性は上がり、ビジネスを成長に向かわせます。そうすれば、他の部署で人財不足に陥ります。こういった部署で活躍してもらうのです。スキルが違うと言われるかもしれませんが、実は会社の内情を知っているので、コミュニケーションがすぐに取れる。派遣などを雇うより安い、社員を採用するにもコストと時間がかかる。といった意識されないコストも削減できます。
事業の宝は人財です。そして、事業をするのは人です。優秀な人財であっても、企業に馴染めなければ力を発揮できません。業務にもよるとは思いますが、古くからいる馴染んだ人財を活用することは重要な戦略でもあるのです。
このような効果をビジネス思考の効果とすることも出来ます。

限られた予算で投資する思考

限られた予算で投資する思考とは、リスクを減らし、時間軸も考慮したベストな分割投資をする思考です。
IT投資の見積り構造にあるように、必要な工数に対する工数は積み上げ算ですから、初期投資が大きくなります。この投資額を工面することや、高額だからこその不安もありIT投資を躊躇することになり、IT投資が進まない理由になっている企業もあると思います。
これは、どうしてもIT業界視点の市場で契約が発生するからです。しかしながら、視点を発注側の都合にしながらも、投資対効果を期待する思考が、限られた予算で投資する思考です。
投資対効果は投資額と相関関係にありますので、100,000万円の投資対効果と、1,000万円の投資対効果では得られる量が違うことは仕方がありません。しかしながら、投資対効果で得られる量は10分の1ではなく、ビジネス思考によって高めることができます。しかも、経営には時間軸も重要なファクターであり、市場の変化に柔軟に対応していかなければなりません。つまり、最初から必要な機能を用意する大規模投資をするのではなく、最低限の機能をベースにして育てていく思考とすれば、優先度の高い機能から早期に利用でき、早期に効果を得られるメリットがあります。
デメリットは、最終的に同じ機能を構築するのであれば、コストは割高となり、最終形になるまでの時間も要します。ただし、全機能が想像通りに使われることが前提です。実は、最初から全機能が想像通りに使われることは現実的ではありません。構築に1年かけていたら、1年の間の変化が反映されていないからです。仕様を確定した時の状況のままだからです。
但し、全体のコーディネートとアーキテクチャーに注意しなければなりません。コーディネートを間違えると、維持コストなどに影響します。わかりやすい例でいえば、パソコンは就業時間内に活躍しますが、帰宅中は利用しません。では、24時間営業のコンビニで使わるパソコンは24時間利用されます。つまり、同じパソコンでも利用時間によって活躍量は違います。ITも、出来る限り利用に応じたコストであって欲しいと考えます。
また、利用し始めたが市場の変化により、直ぐに改修しなければならないことも想像されます。このようなときに、改修に構築と同じ時間と投資をするのではなく、少しでも減らす工夫を仕掛けておくのが、アーキテクチャーです。将来の柔軟性に対応できるようにしておくことです。これは、経営とITの両方を理解できる人財でなければ、実現することは難しいでしょう。

キャッシュベースのIT投資思考

キャッシュベースのIT投資思考とは、限られた予算で投資で得られたプラス効果の一部を次回の投資の源泉とする思考です。
PPM(プロダクトポートフォリオ)という考え方があります。簡単にいえば、金のなる木と呼ばれる収益性の高いサービス・商品で得られた利益を、次の金のなる木になるサービス・商品に投資をすることです。
キャッシュベースのIT投資思考は、このPPMの思考と似ています。たとえば、毎月の投資予算を500万円とした場合、この500万円に以前に投資をして得られたプラスの内、いくらかを上乗せします。投資対効果で得られた利益からの捻出です。
中小企業では、キャッシュフローベースの経営は重要です。よって、経営に必要不可欠なIT投資もキャッシュフローベースで考える必要があります。大企業もキャッシュフローベースで経営をしていますが、規模が大きいため大規模プロジェクトを幾つも実施させることができます。ようは、企業規模に応じたIT投資となります。
では、中小企業は大企業に負け続けるのはといえば違います。ランチャスター戦略を基本として、企業規模を拡大し、更なる成長路線を取ることで、大企業となることが出来ます。楽天を見ればわかると思います。

キャッシュベースのIT投資思考のメリット

キャッシュベースのIT投資思考のメリットは幾つかありますが「限られた予算で投資する思考でのメリット」「成長スピードを加速させる」が重要です。
キャッシュフローベースのIT投資思考は、限られた予算で投資する思考が前提となっています。このため、限られた予算で投資する思考で得られるメリットは、そのまま得られます。
そして、限られた予算ながらもPDCAとして繰り返し投資をすることが大切です。この方が、最初から大規模投資をするより、期待効果を高めることが出来ます。そして、それを支えているのが、全体のコーディネートとアーキテクチャーです。
成長スピードを加速させるメリットは、IT投資予算を戦略的に活用することです。そもそも、経営とは資金を元手にビジネスをして増やしていくことです。これにより、経済をまわし従業員とその家族を含めて物心両面の幸せになることです。そのためには、キャッシュを経営に使っていく必要があります。余剰金として貯めておくこともできます。しかしながら、貯めるだけでは成長できません。市場競争は厳しく、競合他社にお客さまを奪われて経営危機に陥りる危険もあります。
たとえば、小売り業界ではオムニチャネルが主流です。オムニチャネルへの投資の遅れは、売上低迷に直結し経営に致命的となり兼ねません。IT投資は、市場の変化に対応するだけではなく儲けた資金を戦略的に投資をすることは経営に重要な意味を持ちます。つまり、戦略的な投資が重要な意味を持ち、効果を得るには時間軸も重要なファクターとなるのです。競合他社が、次の戦略的投資をしているときに、時代遅れの投資は効果が薄れてしまうからです。

まとめ

弊社が選ばれる理由である、ビジネス思考とキャッシュフローベースのIT投資思考は、中小企業のIT投資に役立ちます。
少ない投資であってもビジネス思考で、常にベストな最大の効果を考え・実行します。そして、その効果から得た利益を基にキャッシュフローベースのIT投資思考で、加速させていきます。これこそが、発注者側視点のIT投資の本質ではないでしょうか。
IT業界もビジネスなら、発注者側もビジネスです。投資を抑えつつも最大の利益を求めるということは必然です。だからこそ、ビジネス思考で両方の立場を熟知した弊社が選ばれる理由となるのです。
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