競争優位性がある企業はITも強い
競争優位性がある企業には、素晴らしいITが存在しています。
たとえば、グーグルには検索エンジンがあります。ヤフーもGoogleの検索エンジンを利用しています。また、MapReduceという大規模で高速処理ができる技術を持っています。このような優位性があって、いまのグーグルがあります。このことは、ネット企業に限ったことではなく、ITを優位性にするのは製造業や小売り等の様々な業種業態にも当てはまります。ITなくして経営が成り立たない時代において、成功している製造業があるということは、優れたITが存在しているということになります。小売ではオムニチャネルへの投資が積極的であることからもわかると思います。
では、ITを強みとするためには、どうしたらよいのでしょうか?
椅子の製造販売をするメーカー企業をテーマとして考えてみます。椅子を自社の事業に置き換えてみてください。
競争優位性をITで具現化してオリジナリティを打ち出す
競争優位性は他社と同じことをしては成り立ちません。もし発想がコモディティ化したものであるならば、ITで優位性を確立することはできません。(参考:IT企画が発想のコモディティ化をしていませんか?)オリジナリティのあるITとは、多機能・コスト削減といったことではなく、他社に負けない価値をお客さまに提供することです。
では、テーマとした椅子のビジネスですが、椅子といっても幅広いので欧州にあるファッションというよりは、おしゃれではあるがオフィス、カフェなどで使われるような椅子とします。
下記は、椅子の市場の状況仮説です。
●オフィスの椅子は、長時間座っていても疲れない人間工学性が求められている。
●販売は1点単位だが、オフィス単位、店舗単位となるため数十、数百の単位で売れる。
●カフェなどでは、ファッション性も求められる。
●競合は多く、製品数は無数にあるため差別化が難しい。
●販売先はオフィス内装業者、店舗内装業者などによる代理店販売が主。
●デザインが決まってから正式発注となるため、在庫引き当てに苦労している。
●カフェなどでは色・デザイン要望もあるためカスタマイズ品も請け負っている。
このことから、椅子メーカーの課題は「正式受注から納期までの期間が短く、かつ在庫切れによる機会損失を防ぎつつも、余剰在庫を持たないようにする」と考えることができます。つまり、この課題を解決することができれば、融通の利く椅子メーカーとして優位に立つことが出来ます。この課題を実現するためのITを構築することが優位性を確立する投資となるのです。
このケースでは安易に方向性を示していますが、実際には事業特性、データ分析をして仮説検証をします。特に事業特性は椅子といっても、どこにでもあるパイプ椅子もあれば、地方テーマパークなどにあるプラスチックの椅子もあります。安価な椅子以外にも、高級ホテルにある椅子は特注もあります。それぞれ、原材料も違いますし、生産工程も違います。更にいえば、販売方法も違ってきます。扱う椅子の市場でのポジショニング、外部要因、内部要因も考慮して最適解を見つける必要があります。
RFPを作成する?
RFPとは、SI企業に開発を依頼する提案要求書です。ITコーディネータ協会にもサンプルがあります。しかし、実経験者からいえば理想と現実は違います。どうしてもSI企業のリスク軽減のための内容であり、発注する事業者に負担となっているのも事実です。
現実的なこととして、RFPには機能概要を記載しますが機能概要はこれから優位性を確立するための重要な内容です。しかも、これから設計するのですから細部まで伝えることは出来ません。更に、人・金・物・情報の流れが円滑に流れるか確認する必要もあります。もし無視すると歪が非効率となってしまうからです。つまり、SI企業に正しく伝えるためには、優位性を理解し、かつ、ITイメージを持ち合わせなければならないのです。両方の知識と経験がなければ、とても困難な仕事です。
補足をすると、全てのITにオリジナリティが必要ということではありません。ビジネスモデル・戦略に直接的に関係のある領域に対しては必須であって、会計、人事給与などは法律で決められたものですので該当しません。つまり、どの企業でも共通して扱う業務に対してはクラウドサービスなどの低価格なサービスを利用することになります。
注意点
ITで優位性を確立するということは、仕様はとても重要です。SI企業に正しく構築してもらうには、優位性を理解する経営視点、技術的なIT視点の両方を持ち合わせなければならないのです。基本的にSI企業は構築することが仕事です。ですので、出来る限り経営とITの両方を知っているコンサルタントを自社の一員としてIT構築に参画してもらうことがベストです。コンサルタントは高いというイメージがあるかもしれませんが、コンサルタントはそれ以上の無駄な時間と投資(コスト)を削減し効果をだします。また、自社だけでは難しい、SI企業との交渉・管理含めてコンサルタントに依頼するのも可能です。是非、ご検討ください。(デザイニストラボへのお問合せはこちら)
また、実現するためには「1から基幹システムリニューアルをする方法」。その中にはERPをカスタマイズすることも入ります。もう1つは、「既存システムの改修と統廃合」です。実は、どちらがIT投資が少ないかは調査が必要です。たとえば、既に複数のITが存在しており、統合するためのカスタマイズ量が膨大になると1から導入した方が安く済む場合もあります。安易にSI企業の話で決めるのではなく調査をしてから決定した方が良いでしょう。
最後に
「IT投資で伸びる会社、沈む会社」(著者:平野雅章 教授)という本があります。「IT投資の効果を最大限に得るには組織の能力を高めることである。」と言っています。2007年の本ですが、いまでも当てはまります。IT構築をしたが、このITを使いこなさなければ効果は期待できないということです。同じITを導入しているにも関わらず、成功している企業、失敗している企業があるのは、どれだけITを使いこなしているかの差です。IT構築後は、定着という工程を忘れずに実施することが大切です。