IT企画書に会計が無い?
IT企画書の書き方を検索すると、アウトライン(見栄え、見やすいさ)、流れ(目次や各項目のポイント)について説明されています。しかし、予算のことになると、ざっくりしていて、ROI(投資対効果)のことは書かれていない。これで良いのでしょうか?
IT企画とするということは、最終的にはいくら利益に貢献するかである。そのためには、実現方法、予算(投資)、投資回収計画に妥当性がなければなりません。ここでは、IT企画に記載しておきたい会計について考えます。
自分なりにシミュレーションしてみる
計画書に予算や投資対効果を記載するにあたり、まずは自分なりにシミュレーションすることをお奨めする。投資(見積り)の妥当性、投資回収計画などの目安とするためです。ただ、注意すべきは、自分のシミュレーションと一致させることが目的ではなく、最終的に企画の収支に妥当性があるようにするためです。
もし、シミュレーションが出来ないようであれば、コンサルタントも考えて欲しい。シミュレーションが無いと企画倒れになる可能性もあるからです。企画は、実施することで、いくら利益に貢献するかです。目安ではあるものの、シミュレーションは重要な意味を持つのです。コンサルタントは、シミュレーション支援、見積りの妥当性、交渉含めて支援し、洗練された企画書となり、十分に価値があります。
予算(投資額)の策定
ある程度のやりたいことが決まったら、必要な予算(投資額)を検討することになります。企画だから概算で良いという意見もありますが、出来る限り明確にする必要があります。予算内で完結できるようにすることも仕事であるし、従業員全員で稼いだ大切なお金であるからです。
見積りを依頼するにはRFPが必要です。RFPは、実装する機能から工数を算出する根拠となる資料となるものですので、出来るだけ詳しく記載されていることが望まれています。しかしながら、詳細まで記載するということは、ある程度の設計をしていることに等しくなり、現実的ではありません。
ですので、提出される見積りは概算であり、概算にはリスクが上乗せされているので、想像より高い金額になっています。リスクは、何かあっても利益を確保するための保険のもので、本来なら不要な工数(金額)なのです。予算としても妥当性があるものではありません。
このような時は、自分なりにシミュレーションした数字が役立ちます。参考値ではありますが、見積りから、シミュレーションした数字の差額がリスク額に相当します。このことを理解したうえで、予算の内訳として管理すると良いと思います。
このリスクですが、見積りの詳細を読み解く力と、ベンダーと対等に話すことが出来れば、理解を深めて交渉することが出来ます。
実現方法と予算に妥当性があるか?
企画書には、どのような方法で実現し、投資額を記載します。このためには、企画者は何度も各社の提案をもとにベストはソリューションを検討しなければなりません。
たとえば、ECリニューアルをする場合、独自ECの作り込み、パッケージのカスタマイズ、クラウドサービス、楽天やアマゾンのモールを利用など、検討することになる。独自EC、パッケージは、インフラの検討も必要になる。クラウドサービス、楽天、アマゾンは、利用料を検討することになる。更に、楽天、アマゾンは、モールで良いのか検討することになる。また、独自機能を実装するためには、楽天、アマゾンは対象外となる。独自改造が可能なクラウドサービス、独自EC、パッケージとなる。そして、インフラは初期投資が高く、リリースまでの時間も要することから、独自に改修ができるクラウドサービスを選択することになる。
そして、クラウドサービスの初期費用、ランニングコストで計算し、投資対効果が十分に確保できるか再確認する。パッケージのカスタマイズ、モール等も含めて、全ての初期費用、ランニングコストも算出して比較するべきであるが、ECはコストだけでは選べるものではない。実際には、オムニチャネル、ECマーケティング、拡張性などを考慮しなければならず、これからのEC事業の戦略を満たせることが前提で、コストが低いものを選ぶべきである。
実現方法と投資回収計画に妥当性があるか?
投資をするわけですから、投資額以上のリターンがなければなりません。投資に対するリターンがどのように構成され、どのタイミングで投資額を上回るのか計算することである。
回収額を計算するにあたり、企画が具現化し、リリース後の影響をバリューチェーンでプラスマイナスする。たとえば、BPRの投資であればプロセスを見直すわけであるから、様々なプロセスに影響があり、その影響を金額にするのである。ECリニューアルであれば、運用コストの増減、売上の増減、業務効率の増減などを考慮して算出することになります。
もし、この投資回収計画が悪いようだと、投資をしない方がよいということになる。
経費削減を目的として1億の投資を企画したとする。経費削減効果の合計が1億円を超えるまでの期間が、5年かかるようであるなら投資する意味はない。回収計画が遅れるリスクや、企画を遂行するための予算に含まれない経費(関わる人の給与、諸経費、光熱費など)があるため、投資効果は得られないと判断する。遅くとも、2~3年以内に回収できる企画であるべきで、自社利用のソフトウェアの減価償却である5年以内に十分な恩恵をうけるようにしなければならないのである。
考え方の1つとして、もしECであるならレベニューシェアという考え方がある。売上に対する割合を払う方法である。ヤフーショッピングでは、使用料ゼロ円とすることで初期費用と固定費を最小にして、売上に比例して数%の手数料(変動費)などを徴収している。このことにより、投資回収計画に妥当性がでやすくなる。残念ながら、ヤフーショッピングでは1億未満程度の売上しか見込めないが、考え方の理解を深めるにはわかりやすい例です。
毎月、投資の効果が損益分岐点を超えているか?
上記は、投資回収計画ですが、その基礎となる毎月の収支を固定費と変動費をわけてシミュレーションをする必要があります。ざっくり、幾ら利益が増える、コストが減るということではなく、ITが稼働した際のコストを使って計算することが必要です。当然と思うかもしれませんが、残念ながら出来ていないのが実態なのです。
このシミュレーションで、毎月の投資に対する収支が損益分岐点を超えていなければリスクが高い計画といえます。毎月の投資に対する回収(収支)がプラスでないということは、結果的に投資対効果を得られない事になってしまうかもしれないということです。
もし、余裕で超えることが出来ていないようであれば、実現方法に問題があるか、投資額に問題があります。このことにより、計画の見直しをしなければなりません。
しかしながら、戦略的投資は毎月の収支が計算できないと思われるかもしれません。たとえば、顧客の利便性のあるサービスのための投資があるとします。これでけでは、直接的に利益をうむわけではないので、計算が出来ないと考えるかもしれません。
でも、なぜ利益に直結しない投資をするかといえば、新規顧客の開拓、リピーターを増やしたいからです。ですので、この増加に対する貢献利益を数値化します。顧客が増えれば、売上が伸びますので、利益も増えるはずです。
つまり、どのような投資であれ、目的があり、この目的の先には貢献利益があるはずです。このことを数値化します。
資産と経費
ここから先のことは説明している人はいないのですが、みなさんは資産と経費を意識していますでしょうか。誰も話をしないので、意識していないと思います。また、大企業であれば財務インパクトは軽微ですので、意識しないでしょう。しかし、中小企業は必須なことです。
資産と経費でわけて計算するということは、簡単にいえば、会社損益に影響し、税金にも関係します。また、キャッシュフローにも関係してきます。更にいえば、会計監査のヒアリング事項でもあります。
出来るだけ経費としたいといったこともアカウンティング計画ではあります。会計基準があるので、勝手に資産や経費にすることは出来ないのですが、自社でECを持つことは資産となり、クラウドサービス等は経費となるので、実現方法の選択に考慮することが出来るのです。
まとめ
会計(数字)は、企画を精査・判断する基準です。企画には、定性的な内容と、定量的な損益の両方に妥当性があって承認されます。決裁をする経営陣も、最終的に儲かるのか? 企画内容に妥当性があるのか? が、判断基準なのです。企画の説明ロジックも素晴らしく、伝わる企画であっても、儲からないのであれば企画が承認されることはないのです。
会計の視点を持ち企画をするということは、財務インパクトへの影響を理解するということであり、重要な意味を持ちます。IT企画をされる際には、会計の視点を持った企画であることを推奨します。
財務インパクトも含めた、会計を考慮した企画を申請すれば必ずや承認されることでしょう!
会計を考慮した企画に興味がございましたら、是非弊社まで問い合わせください。貴社に最適なIT企画をご提供・ご支援いたします。