【連載】ヒアリングルール

AsIsとToBe

D社小林からの助言で、要件定義のヒアリングを3回実施することにした。1回目はAsIs(現状の棚卸)、2回目はToBe(次期)、3回目は整合性である。一般的には1回しか実施されないが、AsIsとToBeがごっちゃになってヒアリングされることで、よくわからない事になってしまうからである。
山田マネージャーは、過去の失敗を思い出していた。
各部署の担当者からヒアリングが開始された。現状業務の説明、既存システムの不満・問題点が説明された。淡々と担当者から思いついたことが話された。
ベンダーは、把握しようと「現状」を聞いていた。この処理は、どのシステムを使っていますか? どのような機能ですか? と質問をしていた。担当者は、詳しくないのでわからない。と回答し、山田がフォローした。
失敗は、ヒアリングの結果、まとまった資料は、現状の個々の目先の課題を解決しただけで、既存の延長でしかなかった。ベンダーは現状の焼き直しで考える傾向がある。これでは、担当者が困っているシステム改善にしかならず、既存システムを改修すればよい。つまり、投資対効果は限定的で、改善された点もあれば、逆に新たな課題を作ってしまった。

ヒアリングだけでは要件定義にはならない

山田マネージャーが、過去に失敗した経験では、ヒアリングした時は、その場ではわかったつもりでも、実際にまとめたドキュメントは、間違いが多い。tobeを考える時に現状の課題を解決しようとすることに異論は無いが、それだけでは足りず、プラスとして課題がボトルネックであるか確認が必要になる。言い換えると、作業効率の課題だけでなく、人物金情報の流れを妨げる要素が課題となっていないと効果は限定的であるということである。業務効率化を考える上では、制約理論が役立つが、制約理論に当てはめてハービーが課題として認識しているかが重要となる。ようは、点の作業レベルだけではなく、線(面)のレベルでも考えることが大切なのである。

ヒアリングされていないこととは?

また、ヒアリングでは、正常系の流れを説明される。たとえば、受注があり在庫を引き当てするといった具合である。では、在庫切れの場合は、どのような運用になるのか説明できるかといえば、難しい。たとえば、「欠品になるので、お客様にお詫びをする。」という想定もあれば、「在庫がゼロの場合は、受注できないようにする」という答えもあれば、「バッファ在庫があるから、欠品にはならない」という答えかもしれない。つまり、商品と販売方針で決めるということになる。これを同じように扱うことで、機会損失を生み出してしまうことになるので、しっかりとビジネス視点で考える必要がある。