観光ビジネスにおけるIT活用法

IT経営

観光ビジネスにおけるIT活用の実態

富士山が世界遺産に登録され、観光ビジネスにおいて世界遺産の認定は是非とも欲しいものです。余談ですが、富士山はゴミ問題が課題となっていますが、わたしは以前に富士山ゴミ拾いに参加したことがあります。道路から少し入ったところでしたが、ゴミは見事なぐらいにありました。特定の地域だけかもしれませんが、今では見かけない古い形の空き缶、コンビニの袋、等々あり、木の根に取り込まれてしまっていることもありました。最近のゴミだけではなく、昔からのゴミが蓄積されているようです。また、発見しませんでしたが注射の不法投棄もあるようです。観光客が、マナーを守り自然遺産と付き合うことをしなければいけません。
さて、観光ビジネスにおけるIT活用ですが、観光ビジネスの基本戦略は観光客の体験価値を最大にすることです。つまり、おもてなしを基本とした総合サービス事業とも言えるのではないでしょうか。(参考:成功企業に学ぶ!観光ビジネスは観光協会の組織行動が成功の鍵
では、ITをどのように活用する戦略が良いのかご説明します。観光ビジネスをされている地域・協会の皆様のお役に立てば幸いです。ご検討の際には弊社までご相談ください。(お問合せ

IT活用の基本は戦略と融合させること

業種・業態に限ったことではありませんが、ITは経営戦略と融合させることが基本的な考え方となります。各部署からの要望だけで投資の判断基準としてしまうと、投資対効果は部署限定でしかありません。事業において各部署と連携は重要であるように、ITも各種システムと融合させることで情報価値を高めることができます。経営は、様々な情報を材料に意思決定されます。この情報価値が高ければ高いほど経営の意思決定に役立ちます。
また、ITは単なる道具ではなく優秀な社員です。(参考:CIOが語る!ITは優秀な社員です。道具と考えると失敗します。)企業が経営戦略を従業員に伝えベクトルをあわせてビジネスをするように、ITも経営戦略と融合させることで経営戦略を具現化させます。
現状の観光ビジネスのIT活用として思い浮かぶのは「ホームページ(観光案内)」「ホテルやアクティビティなどの予約」「Free wifi」です。しかしながら、観光ビジネスの基本戦略は観光客の体験価値を最大にすることですので、これだけでは不十分です。もっと、戦略と融合させなければなりません。それには、ITにも「おもてなし」を組み込みます。
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情報を観光協会内でオープン化・共通化する(個の財産から地域の財産へ)

観光協会を母体として観光協会の参画者全員が共通で仕組みを持ち、お客さま情報、ホテルの空き室含めて共有することです。共有した情報で地域観光のポータルにします。
それぞれの旅館やホテルはライバルでもありますから、お客さまを奪われる心配があるかもしれません。でも、観光ビジネスとして集中すべき相手は観光客です。観光客がいなければライバルと張り合う以前の問題ですからね。また、戦う観点は体験価値の満足度を争うのであって、奪い合うことではありません。お客さまを奪われる心配は、協会でルール化することで抑制しますし、もし目先の利益にとらわれルールを破ってしまったら代償が高くことは想像できると思います。
旅館やホテルの評価は観光客が決めることです。魅力ある観光資源があり、リピートするにも同じ宿泊施設に泊まるとは限りません。だから、リピート時の宿泊先を再度指名してもらえるように体験価値を高めることに注力した方が得策です。そのリピートを増やすには、地域が一体となって多くの人に観光客になっていただき、体験していただくことです。
では、なぜ情報をオープンにして共通化することが良い事かといえば、お客さま予備軍が予約をして観光客になっていただく過程において情報資産を最大に活かせるからです。
皆さんも旅行に行こうとした場合、観光名所は当然ながら宿泊先や、その他イベントも検索します。その場合、同じ地域でありながらバラバラに情報資産が乱立しており、口コミサイトやブログがSEO対応で上位に検索されている実態から、観光協会は観光地域の総合ポータルサイトにならなければなりません。
観光地域には目玉となる名所があるかもしれませんが、それだけではないはずです。宿泊先、温泉、アクティビティ・・・全てに価値があります。アマゾンがリコメンド機能で売上を伸ばしているように、名所以外のところもリコメンドすることで価値をもっと高めることが出来ます。
アマゾンに買収されたザッパラス(靴の販売企業)は、自社に在庫がなければ他社の在庫を調べてお客さまに情報提供します。これが、お客さまに評判となって一足の靴の売上以上のお客さまを呼ぶことが出来ました。もしお目当ての旅館が満室であっても、他の空き室のある旅館をリコメンドすることが出来ます。また、何よりも他の観光地に移行されるリスクを減らすことが出来ます。比較されるにも同じ地域で比較されれば、地域の観光ビジネスに貢献することが出来ます。
わたしは旅行が好きなのですが、いつも深夜まで格闘です。仕事の都合で出発ギリギリの予約となるのですが、観光地・ホテル・遊びが最大になるように探します。つまり、時間と費用の投資対効果が最大になるようにです。場所を決めても、ホテルに空きがなく他の地域を再検索したり、情報収集に苦労します。
もしお客さま候補に伝える情報が不足していることで誤解を招き、他の観光地に移行されてしまうかもしれません。人は情報を処理して意思決定します。持ち合わせていない情報は、考慮されません。逆にいえば、情報を伝えることが出来れば、意思決定に考慮されるのです。情報を分散させてしまっては、お客さまの検索方法に委ねられます。しかし、観光地域全体をお客さまに情報を伝えることが出来るようになれば、情報伝達ルートをコントロール出来るようになります。これは、とても重要なことです。
また、お客さま情報も共有することで、リピートマーケティングの効率化や、観光地域全体でワンツーワンマーケティングをすることが出来ます。
前回は違う旅館に泊まっていたとしても、地域としてお客さま一人ひとりに気配りのおもてなしが出来ます。リッツカールトンは、ベルボーイが荷物のタグを見て、名前で出迎えてくれます。しかも、フロントと通じているので、予約情報まで知ることができ、入った瞬間から気持ちの良い宿泊をすることができます。だから、高いホテル代であっても、体験価値が予算を上回りお客さまがつくのです。このようなことを地域として取り組むのです。
個人情報の見解もあると思いますが、無断で利用することは出来ませんが、逆にいえばお客さまの許可を得ることで利用が可能になります。お客さま情報は資産です。資産活用はビジネスの基本です。

観光地の魅力を伝える

観光名所には観光協会のホームページがあります。記載されている内容は「観光名所の情報」「アクセスマップ」「宿泊施設」「お食事処」「その他補足事項」です。きれいな画像を使い、観光名所をアピールしています。
しかしながら、観光協会が提供できる情報は、これだけではないはずです。言い換えれば、観光を検討しているお客さま候補に伝える情報としては、これだけで本当に十分なのでしょうか? お客さま候補が意思決定できる情報は伝えられているでしょうか? おそらく出来ていないと思います。いまの時代は、口コミやブログが補っているのが実態だと思います。口コミやブログは、実際に観光客となった経験談ですので、リアリティがあり参考にする人は多くいます。
他方で、観光地で事業をされている皆さんからすれば、もっと伝えたいこともあるでしょうし、体験談を補足することもしたいはずです。良い口コミは励みになりますし、悪い口コミは改善すべき点を教えてくれています。消費者の声を反映した商品が開発されているように、観光ビジネスも観光客の声を反映させることで、今以上の発展を望むことが出来ます。
ただ、観光客と観光協会(地域)のそれぞれが一方通行で発信しています。Facebookでは、企業が参加していますが使い方としては一方通行です。観光客の口コミに感謝の言葉を返信することは、観光客へのアフタフォローができます。もし悪い口コミでも、気付かせてくれたことに感謝の返信をします。クレームを言ってくるお客さまも不満を解決することででリピーターへとチェンジします。ジョン・グットマンの法則というのがあり、不満を解決したお客さまの方が、不満を口にしないお客さまよりもリピート率が高いという結果があります。双方向コミュニケーションがアフターフォローとなり、体験価値を薄れないように記憶に残れるようにします。

旅行会社との連携

旅行会社は、マーケティングや予約代行等をする変わりに手数料を取ります。契約されている観光ビジネスの方は、この手数料をマーケティングコストとして計算していると思います。しかし、地域の皆さんで情報を伝えることで直接の予約が増え、旅行会社への手数料分、利益として還元されます。また、Expediaなどの宿泊予約サイトがあり、正規の価格がわからなくなってきています。逆にいえば、直接予約の価格も調整できるのではないでしょうか。これにより、利益の最大化を図ることができます。
とはいえ、直接取引が増えることは良いことではあるものの、旅行会社の役割は大きくインターネットの普及により中抜きが話題となってはいますが、大手旅行会社のブランドを利用することは必要です。旅行会社は、販社ですから特に新規のお客さまを獲得することを得意としています。また、総合的な予約をすることが出来ますので、お客さまにとっては付加価値になります。
となれば、旅行会社と空き室情報・予約の連携機能は必要となり、地域として管理している空き室状況等のリアル更新が求められます。APIという技術がありますので、観光協会独自のコンテンツと各旅行会社をつなぐことは実現できます。空き室のリアル更新も、お客さまへの大切な情報となりますので、実現すべき事項です。

ITは再構築しなくても育てることが出来る

ITの構築次第ではあるものの、プロの仕事をされているSI企業であれば拡張性があります。これは、将来を見越して機能を追加しやすいように事前に設計しておくことです。たとえば、観光協会総合ポータルを構築するとしても、1から作り直す選択肢もありますが、各企業や旅館のコンテンツをつなぎ集める技術も存在しています。SI企業としては、理由を付けて新品にして大きなビジネスとしたいと思っているかもしれませんが、ITは発想次第で投資を抑えながら効果をだすことは出来ます。ITは育てるものであって、必ずしも製品のライフサイクルのように新品に置き換えなくても良いのです。ケースバイケースで、最適な投資判断をすれば良いのです。
また、情報は観光地域にだけあるわけではありません。たとえば、口コミサイトにもあります。情報提供してくれるかは相手次第もありますが、日本の観光ビジネスを発展させたいという気持ち・相乗効果・お互いにメリットが見込めるのであれば、提携することは出来ます。それぞれにビジネスの得意分野があり、口コミサイトは情報拡散(マーケティング)に長けており、観光地域の人たちはリアルな旅館経営などに長けています。ビジネスは、自分の弱いところを補ってもらう・強みを補強するなどのために企業間取引があります。いまでは、ITを使って具現化することが求められています。
もしITがわからず、アドバイス・SI企業からの提案が妥当なのかわからず悩んだらご相談ください。御社のIT部門の立場、経営者の立場で妥当性診断やSI企業との交渉コンサルティングを致します。

Free wifi

スマートフォンは、ほぼ誰もが持っています。いつでもネットでコミュニケーションや、情報の取得が出来ることが魅力です。しかしながら、日本のキャリアと契約しているのであれば問題となりませんが、外国人やパケットを抑えたい人向けに無料のwifiを張り巡らせることが求めていると思います。wifiは、パケットに比べて高速というメリットもあり、電車でも無料で使える時代となりつつあります。
では、観光地でwifiを巡らせるには莫大なコストがかかると思われるかもしれませんが、いまの時代は各施設にインターネット網の契約はされているはずです。つまり基幹があるわけです。後は、wifiの親機を各施設に設置するだけで最低限の準備は整います。あれこれと機能を付けると高くなっていきますが、観光ビジネスの基本戦略である体験価値を高めることを優先し、マーケティング情報の取得機能などは後からでも追加できますので、柔軟に対応していけば良いと考えます。

まとめ

お客さま情報や、空き状況を共有するという発想は、抵抗があるかもしれません。しかし、ビジネスは業界常識が制約になるとイノベーションが制約されることと一緒です。これは、どこも横並びの戦略となり、お客さまへの価値を制限している可能性もあるということです。たとえば、野菜をインターネットで購入することは、どのような物が送付されてくるかわからず、ビジネスにならないと言われている時期もありました。しかしながら、ネットスーパーの利用者も増えていますし、いまではビジネスが成り立っています。業界常識が本当にお客さまのためになっているのか見つめ直し、常識を覆すことで業界の新たな発展につながるのであれば、進めるべきです。業界常識も、結果や他の成功事例が広まることで、新しい業界常識へと変化していくものです。ご検討ください。
このIT活用法が成り立たないのは、何もしなくても永久に体験価値を提供できるキャパシティを超える観光客がやってくる場合です。オフシーズン含めてです。
もし、いま儲かっていたとしても時代の変化により、ブランドは薄れていきます。キリンビールはビール業界の絶対的存在でした。営業は何もしなくても注文はやってきました。しかしながら、量販店の存在やアサヒビールの戦略により、業界1位の座を奪われてしまいました。つまり、未来永劫に繁栄することは無理で、常に企業努力をし続けなければならないのです。観光ビジネスの象徴的なハワイであっても、努力は惜しみません。悪循環に陥ってしまう前に出来る限りの努力はしましょう。