地域産業におけるブランド化戦略

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地域産業におけるブランド化戦略

地域産業におけるブランド化戦略について、豊岡鞄を題材にして考察したいと思います。
豊岡鞄は、2006年に特許庁の地域団体商標として、認定された兵庫県鞄工業組合の登録商標です。ロゴマークも登録商標されており、豊岡鞄を名乗るためには、兵庫県鞄工業組合員で、ブランドコンセプトを守るというマニフェストに署名・捺印して企業として宣誓すること、そしてその製品が豊岡鞄認定審査を受けて合格しなければなりません。認定されている企業は、どれも歴史があり、こだわりのある匠な仕事をされてきた企業と想像します。この地域ブランド化のためには、豊岡鞄の名前を粗悪品によって、ブランド価値を落とされないために認定制度を設けて運営しています。このことは、購入者にとっても、ブランド=商品の品質を保証することにもつながり、安心することが出来ます。
「豊岡鞄」オフィシャルサイトで、豊岡鞄の取り組みは理解することが出来ました。また、認定企業・豊岡鞄を取り扱っているショップリストが掲載されています。
豊岡鞄の販売においては、それぞれの各製造企業がホームページとECサイトを持っています。しかしながら、アマゾンや楽天などがありますから、自社サイトで販売というよりは、セレクトショップ経由の販売が主軸であると思われます。また、豊岡鞄認定以外の鞄も製造・販売をしています。豊岡鞄認定以外の鞄にも需要(引き合い)があり、収益の柱となっているようです。
この後、ご説明しますが、この豊岡鞄認定以外の鞄の需要があるということが、地域産業のブランド化によるものです。鞄の製造者には、兵庫県鞄工業組合の非組合企業もあるはずで、地域産業のブランド化により、豊岡市全体が鞄職人の市とブランド化された恩恵です。

ブランド化するのは豊岡鞄?、それとも、豊岡市?

インターネットで「豊岡鞄」と検索すると、アマゾン・楽天・ヤフーなどでも販売されていることがわかります。楽天にあるショップを見てみると「ショップリストにないショップも存在している」「豊岡鞄認定と、豊岡市製造と2種類ある」ことがわかりました。ショップリストに無いショップでの販売は、ショップリストだけで限定的に販売することも出来ますが、ブランド化はお客さまが体験して確立するものです。ですから、そもそもとしてお客さまの手に渡る手段がなければ、ブランド化することも出来ませんので、販売チャネルとしてのショップが多数あることは必然的です。
しかしながら、豊岡鞄認定と豊岡市製造の2種類存在することにおいては、ブランド化の主軸が違ってきます。前者(豊岡鞄認定)は、鞄をブランド化するもの。後者(豊岡市製造)は、豊岡市を鞄職人の市とブランド化するものです。このことは、とても重要なことです。極論でいえば、前者は鞄に価値があり、後者は豊岡市(企業)に価値があります。当然ながら、豊岡市がブランド化した方が豊岡鞄認定以外の需要拡大にもなり、地域産業の発展につながりますので、求めていく方向性となります。
つまり、豊岡鞄は豊岡市をブランド化するための重要な要素で、お客さまに豊岡鞄の良さを体験していただくことで、豊岡市がブランド化されるという図式になります。このことは、鯖江市のメガネも同じですし、他の地域産業も一緒です。
もし、豊岡鞄が無い状況として、豊岡市を鞄の市としてブランド化することは難しいと思います。理由は、お客さまに伝えるのが難しいが無いからです。いくら企業が良い仕事をしていても、企業の取り組みの情報だけでは、お客さまには伝わりません。鞄という商品が仲介をして、はじめてお客さまに伝わります。豊岡鞄がなければ「鞄を製造する企業が集まっている地域」ということだけで、鞄製造を委託する候補先の1つとしか認識されない危惧もあります。
地域産業のブランド化には、何かしらの他の地域と差別化することが出来る、強みとなる「商品・サービス」があって、お客さまに伝えることでブランド化します。

地域産業におけるブランド化戦略

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豊岡鞄を題材に、地域産業におけるブランド化戦略を考察しました。
このことは、大企業も一緒で(iPhone以外の商品もありますが)iPhoneという商品があり、アップルがブランド化されます。アップルがブランド化されれば、他のアップル商品もiPhone同様の期待が高まり、商品ラインナップが広がり、事業を拡大することが出来ます。地域産業においては、中小企業ですから、1社だけでブランド化することは難しく、地域の強みとなる商品・サービスを介して、地域(市)というバーチャルな企業体としてブランド化することが、地域産業におけるブランド化戦略となります。
この図式は、商品に限らず観光にも当てはまります。世界中で世界遺産の認定に力を入れているのは、このためです。世界遺産が地域の観光産業の活性化につながるためです。また、みなさんも大好きなハワイも、自然が豊かで、きれいな海がブランド化されて、ハワイ全体をブランド化しています。ただ、自然といえば北海道もあります。また、きれいな海でいえば、山口県の角島大橋近辺はきれいですし、沖縄の海もきれいです。もし、ブランド品をお求めでしたら、グアムは島全体が免税です。それでも、ハワイに行くのは、ハワイという地域がブランド化しているからです。ハワイの人たちも、ブランド化のために観光客に対するサービスを誰よりも熱心にしています。そして、帰国の際には、楽しい体験を想い出として、リピートへつなげていくのです。

まとめ

地域産業をブランド化するためには、伝える商品・サービスがあり、この商品・サービスをブランド化することで、地域もブランド化されていくという戦略を理解できたと思います。
しかしながら、「商品・サービスを正しく伝える」「商品・サービスの品質を維持する」「1社では限界があり、地域全体で盛り立てる」ことを忘れてはいけません。
良い商品・サービスでも正しくお客さまに伝えて体験していただかなければブランド化は出来ません。そのためには、お客さまに体験イメージを伝えます。どのようなシチュエーションで、どのような使い方をして、どのような体験をしていただくのかです。ハワイ旅行であれば、ダイビングをするのか?、ショッピングをするのか?、美味しいパンケーキを食べるのか?、細部にまでイメージしていただけるように情報発信し、ハワイに行きたいとなるように伝えます。お客さまが実際にハワイに渡米し実体験に至ったら、期待以上の感動を得ていただけるようにします。パンケーキであれば、美味しいことは当然ながら、接客やサービス、店舗の内装も体験の1つです。いくら美味しくても、不愉快な印象を与えてしまったら、リピートは期待できません。そして、何よりも、美味しいからといってパンケーキだけにハワイにはいきません。ハワイには、ダイビングのオプショナルツアーがあり、DFSでお買い物が出来るといった具合です。ハワイ全体で価値を創造しているのです。
豊岡市でいえば、鞄製造企業が兵庫県鞄工業組合に参画し、豊岡市全体で盛り立てることで成り立っています。
これから地域産業のブランド化を目指すための戦略と戦術の参考になれば幸いです。

参考サイト

「豊岡鞄」オフィシャルサイト(兵庫県鞄工業組合)

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