経営課題を発見することは難しくない
超簡単!経営課題発見5ステップをご説明します。流通業界ではオムニチャネルが標準戦略になっていく時代になり、インターネットとリアルの融合、ITと経営の融合が益々戦略の中心となってきます。経営戦略も時代とともに変化しなければならず、いままで想像がつかなかった経営課題に陥る可能性もあります。いままで、もし勘による経営課題を指摘しているようであれば、財務の数字から分析した結果と比較してみてください。勘とは違った新たな経営課題が発見することができるはずです。補足すると、勘が悪いとはいいません。何故なら、勘で判断しなければならない状況もありますし、勘はひらめきではなく無意識のうちに、耳に入った情報・経験・知識の裏付けにより導かれているからです。ただ、人間ですので、耳に入った情報が誤解してしまう場合もあります。ですので、経営課題を財務数字から導くことも大切になってきます。
では、経営課題を発見する方法ですが、大企業であればコンサルタントや専門部門が分析してくれるかもしれません。しかしながら、経営コンサルタントは高額で分厚い報告書を提出しますので読むのが大変です。また、分析する部門を抱えておく余裕がないかもしれません。とはいえ、勘に頼り続けるわけにもいきませんので、ある程度は自分たちで経営課題を発見する努力をしなければなりません。中小規模の会社であれば、「経営数字の構造」を理解することで可能になります。
本当に難しくないの?
難しいと思うのは、財務数字を見て茫然としてしまうからではないでしょうか。たとえば、利益は「利益=売上-経費」で求められます。では、利益がマイナスとなった場合、売上よりも経費の方が大きいからということがわかります。ですので、経費削減が課題ということになります。さらに言えば、経費は様々な経費の足し算です。経費削減だけでは経営課題の発見とは言えませんが、実は経営分析はこの基本的なことを深堀していけば良いのです。だから、深堀するための経営数字の構造を理解していれば経営課題に辿り着くことができるのです。難しい多変量解析や難しい計算式は不要です。
経営問題発見5ステップ
刑事ドラマを見ていると、犯人は何かしらの証拠を残していきます。この証拠を見つけ、証拠をたどっていくことで、犯人に辿り着きます。経営課題も一緒で、経営課題は何かしらの証拠を残します。この証拠を見つけることができれば、経営課題に辿り着くことができます。
この記事では、犯人が残した証拠を「違和感」と表現します。違和感とは、ん?いつもと違う気がすると思う数字です。たとえば、いままで交通費は経費の5%なのに、10%になっていると違和感を感じるはずです。もしかしたら、ここに犯人に辿り着く手がかりが残されているかもしれません。この違和感を感じるということが、経営課題を見つけることに必要です。では、違和感をどのように感じるかといえば、細分化と割合がサポートしてくれます。先ほどの交通費ですが、1,000,000円という数字を見ても違和感は感じませんが、10%となると違和感を感じやすくなります。このように違和感を感じやすく表現することで、誰でも発見することができます。もし違和感が間違っても、再度違う違和感を感じればよいだけです。やってみることが大切です。
簡単な例を交えながら経営課題発見5ステップを解説します。
- ステップ1:目的を明確にする
- ステップ2:商品・サービス別に業績をつくる
- ステップ3:分解して違和感を探す
- ステップ4:違和感を検証する
- ステップ5:改善シミュレーションをする
ステップ1:目的を明確にする
経営分析をする前に目的を明確にします。闇雲に経営課題を探しても売上なのか?、経費なのか?、目的がわからないと問題を問題と認識することができません。たとえば、A店舗とB店舗を比べて売上が5%違うとした場合、これは問題でしょうか?、それとも問題では無いとなるのでしょうか?、もし売上について分析していたら問題となりますが、経費を問題としていたら問題とならないかもしれません。つまり、経営分析する目的を明確にすることが、経営分析をはじめる第一歩になります。
たとえば、左図は架空の店舗の損益です。この利益では苦労している割には儲けが少ないようです。他社と比較すると、商品販売価格が同じにも関わらず利益が低いようですので、経費に問題がありそうです。そこで、経費の問題を突き止めて利益率向上を図ることを目的として分析することとします。
ステップ2:商品・サービス別に業績をつくる
まず最初は、活動基準原価計算(Activity Based Costing)を基準に分解します。これは、特定の商品・サービスに問題があるのか?、全体的に悪いのか?、判断をします。また、経費を適切な活動に紐づけをしなければ分析が正しく出来ないからです。たとえば、経費を商品毎に計算せずに一緒と考えた場合、商品Aも商品Bも商品Cも同じ経費であると考えることになります。しかしながら、販売単価も違うわけですから、販促費用・仕入原価も違います。商品毎に計算をするということは、実際に活動をしたところに経費を紐づけて管理とするということです。これは、管理管理の基本となる考え方でもありますので、最初に分解することにします。
左図は、商品別に損益を計算したものです。商品Aの利益が異常に少なく違和感があります。
実際には、ここまで極端に数字に現れることはありませんが、商品Aを販売する前には損益計算をして、どれだけ儲かりそうか計算をしてから意思決定をしたはずです。そのときの数字と見比べてみると良いかもしれません。
何かと比較することで、違和感を感じやすくなると思います。
ステップ3:分解して違和感を探す
次は、構成する要素を洗い出し分解(深堀)します。たとえば、経費と言っても、商品仕入、物流、店舗、人件費、諸経費等々とありますので、それぞれに分解する要素があります。その際に、金額の分解だけでなく、割合も計算してください。割合は、違和感を感じやすくさせてくれる優れものです。
左図は、経費を分解したものです。送料が他の商品よりも高いことに違和感を感じます。わかりやすく分解しましたが、実際には違和感を感じるまで分解し続けなければなりません。この工程が、一番頭を使うところです。この例では、わかりやすくしていますが、実際には深く分解する・別の覚悟で分解する等々、これだと思う違和感を感じるまで繰り返さなければなりません。
残念ながら、経営の問題は自首してくれません。犯人への手がかりを見つけるまで、聞き込み調査をしなければなりません。
ステップ4:違和感を検証する
違和感を感じたら原因を特定するまで探究します。何故なら、もしかしたら違和感が経営課題とは限らないからです。たとえば、送料が高いのは海外展開のため海外の企業へ送付したためで、一過性のものかもしれません。この場合は、経営課題ではなく海外展開への投資となります。このように違和感の原因を突き止めます。そして、違和感が本当に経営課題であることを検証します。
現場に残された証拠から、犯人特定にまで追いつめることができました。
ステップ5:改善シミュレーションをする
経営課題が発見できたら、最後に改善シミュレーションをします。これは、犯人を誤認逮捕とならないように裏付けを取るステップです。
左図は、商品Aの送料を下げたところ、大きな利益率改善をすることができました。例でいえば、送料を改善して効果を確認します。もし改善効果が少なければ、経営課題ではあるものの、改善する優先順位が低い課題かもしれません。もっと大きな経営課題が別に潜んでいるということになります。刑事ドラマでいれば、犯人は逮捕したが、実は黒幕がいたという場面です。この黒幕を逮捕しなければ、この事件の解決とはなりません。
補足として、商品Aは、販売個数が多いので、経費改善効果も比例して大きくなることは予想できます。つまり、違和感の勘どころです。だんだん慣れてくると、このように違和感の勘どころが身についてくると思います。
もし間違った判断をしたら
左図は、商品Aは販売数が多いので、もっと販売数を増やそうと計画した場合です。改善前の送料を1,000円で計算すると、販売数を2倍の1,200にしても利益額は微増で、利益率は低下してしまいます。
もし商品Aを売れ筋であると間違った判断をすると、利益率を悪化させることになってしまいます。更にキャンペーンとして販促費を使ってしまったら、増収減益となってしまいます。
こうならないためにも、財務数字から事実を分析することが重要であることがわかると思います。
まとめ
とても、わかりやすい例でご説明しました。簡単な例だから出来るのであって、実際の経営はそうはいかないと思うかもしれません。でも、実際に経営分析をやってみると、結構出来るものです。筆者は、数多くの企画書を作成した経験がありますが、企画書には当然ながら経営課題を示す必要があります。そのときの経営課題を見つける方法が、まさに上記の5ステップです。経験と実績の裏付けのある「経営課題発見5ステップ」です。
お客さまの流動化が激しくなってくる時代において、経営課題を放置するわけにはいかず、立ち向かって解決していかなければなりません。経営課題は絶対にどこかに潜んでいます。経営課題を発見して適切な対処をして根本的に取り除きましょう。また、経営課題は永遠に無くなりません。1つの経営課題が解決しても、次の経営課題がうまれます。経営とは、この繰り返しです。定期的でも、是非経営課題を発見して解決する工程を入れてください。犯人が海外逃亡しないうちに!